龍の星
2024年11月11日朝、流星は虹の橋の袂へと旅立ちました。
2008年10月に生まれたらしい流星。
つまり16歳でした。
石松家に来たのが2023年11月27日――15歳の時です。
流星は生まれも育ちもパピーミルで、15年間、あの子は地獄で生きてきました。
15年間、どんな夢を見てきたのだろう?
狭い檻、汚い天井、冷たい床……楽しいことなんて、きっと何一つなかったと思う。
石松家に来てからの一年で、流星の夢が少しでも色鮮やかになったのであれば、小さな救いになったのであれば――
そう、願うことしかできません。
最後の時間、流る星は夜空を駈け抜け、美しく蒼く燃えました。
そして、今もなお――これからもずっと、夜明けを導く天翔る龍のように輝き続けることでしょう。
冬の朝、早く目が覚めた日は、夜明け前の空を見上げてみてください。
その空に、流星もいると思います。
いつの日か流星と一緒に、あの空を駈け回りたいです。
それまで元気でな。
また会おうぜ!
不滅なる物語
流星が死に、流星が遺したモノは少しずつこの世界から消えてゆきます。
時が流れて僕が死ねば、流星のことを憶えている人はこの世界からいずれいなくなるでしょう。
生きているのか、死んでいるのかすら世界に知られていない、鎖されたパピーミルで生かされている繁殖犬達。
きっと今日も、どこかの繁殖場で親犬や子犬が何頭も亡くなっていて、けれどその事実は――与えられた命がその檻の中で懸命に紡いだ物語は――部外者の我々には知る由もありません。
だから、言葉にしなければ。
流星の物語を――この世の地獄で、白く光る蜘蛛の糸を探し続ける、繁殖犬達の物語を――誰かが伝え続けなければ。
命は永遠ではないけれど、物語は永遠。
だからこそ言葉にして遺さなければと――そう熱く歌いかけられ、想いました。
気分はまるで、合従軍編で決死の覚悟の麃公兵に、「お前達が死んだら、誰が英雄麃公の名を後世に遺すのか!」みたいなことを説いた政です。
流星の物語を、繁殖犬達の物語を、いずれ死ぬ僕達が、同じ寂しさを抱いたいずれ死ぬどこかの誰かへと。
この不滅なる《流星が駈け抜けた空の軌跡》が届くように!
其は限りあるモノ 故に永遠を望む面影
Sound Horizon『物語』
人はその嘘を繋ぐことで 物語と成った
此れは――
いずれ消えゆく者が いずれ消えゆく者へ贈る
玉響の言の葉の花束 不滅なる物語
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