この子にも希望は燃えている

月のない夜…

人間の場合、先天性疾患を抱えて生まれて来る新生児の割合は3~5%と言われています。
100人の赤ん坊がいたら、3~5人は何かしらの障碍を生まれつき持っているということです。
遺伝子に問題がなくても、両親が共に健康だとしても、様々な要因によって先天性疾患は現れてしまいます。
犬の場合はどうでしょうか。
正確な数字は不明ですが、子犬が先天性疾患を抱えている割合は1~2%だとする情報がありました。
しかしこれは、優良ブリーダーの元で生まれた子犬の数字のようです。
劣悪な繁殖業者において、純血種の犬の乱繁殖によって生まれた子犬を含めれば、その数字はもっと大きくなるはずです。
しかも、明らかに先天的な障碍を持って生まれて来た子犬は、おそらく育てないことで死なせている繁殖業者は大勢いるのではないかと思います。
その子達の命は数字には含まれていません。
さらに言えば、目に見えない遺伝性疾患――生まれつき持っている変異遺伝子によって後々発現する疾患を含めたら、その数字は30%程度まで跳ね上がるとする情報もありました。
雑種犬は強い、病気になりにくい、と言われる理由の一つは、遺伝的多様性を持つからです。
複数の犬種の遺伝子を受け継いでいるため、純血種に特有の病気を発症するリスクが下がります。
人間が創出した純血種という生き物。
野生には存在しない、美しく整っていて、洗練された命の形。
それは脆く壊れやすい、硝子の器でもあります。
だからこそ、生命を扱うことへの責任が文明人たる我々人類にはあるのです。

障碍を持って生まれて来た命を抱いて、見上げた夜空がどんな色をしているのか――軽々しく言葉にはできません。
月のない夜は、真っ暗で怖い。
けれどその分、星はとても輝いて見える!
どんな子にも《月のない夜を照らす星希望》は燃えている!

月のない夜を照らす星

ご報告が遅くなりましたが、5月頭にパピーミルよりボーダーコリー♀の子犬を保護しました。
繁殖業者が子犬を手放す理由は、だいたい決まっています。
ペットオークションに出品もできず、親犬として育成することもできない理由――先天性疾患です。
もし前足が欠損してたり折れ曲がっていたり、外見的な異常が見られていたら、その子には生まれて間もなく不幸が訪れていた可能性がありますが――外見ではわからない異常であれば、商品にするため育てられるはずです。
そしてある程度成長した時、異常に気づいたら――その子にはどんな運命が与えられるのか?
ペットショップには、先天性疾患を抱える子はまず売られていないでしょう。
では、その子達はどこへ行ったのか?
月のない夜、燃えるように煌めく星がある一方で、この夜空には見えない星があまりにも多すぎるのです。

ボーダーコリーのこの子には、心雑音があります。
僕が保護した時、生後2ヶ月でした。
後肢に先天性疾患を抱えて生まれて来たうしおのように、何ヶ月も狭い檻の中に閉じ込められ飼い殺しにされるのはあんまりなので、早い時期に保護したかったのです。
しかし現状、石松家で生後2ヶ月という大切な時期の子を迎え入れるのは不安だったため、この子は心優しい方に一時預かりをお願いさせていただきました。
快く引き受けてくれて、本当にありがとうございます。
僕よりもボーダーコリーに数段詳しい方ですので、安心して託すことができ、これからの手術のことなど相談させていただきました。

この子のワクチンなどの医療費は、石松家で賜りました寄付金を充てさせていただいております。
ご理解のほどよろしくお願い致します。

きっとこの夜空には、見えない星のほうが遥かに多いのだと思います。
宇宙には無数の恒星が存在するのに、夜空が星の光で埋め尽くされないのはなぜでしょうか?
それは宇宙の膨張速度が、星の光が地球に届く速度よりも速いかららしいです。
存在するのに、見えない星。
誰にも気づかれず、生まれ、滅び、そしてその光は決して私達に届かない……。
それでも、今もどこかで生まれた星々は懸命に光を届けようと燃えています。
生まれつきほかの星とは少し異なる色をしたその光は、瞳には映らないかもしれないけれど、確かに存在しているのだということを胸に刻まなければなりません。

最後に。
この子は本当なら、僕が助けるべきではなく、繁殖者が助けるべき命です。
育てられないなら、繁殖者が自らの責任で里親様を探すのが当然です。
僕はこの子の保護に関して一切の金銭のやり取りをしておりません。
むしろ皆様から賜ったご寄付を勝手ながら充てさせていただきましたし、これからも医療費は負担致します。
お世話をお願いしたのは僕なので、それしか責任を果たせないからです。
皆様の温かなご支援によって、完全に地獄に沈んでしまう前にこの子を救い出すことができました。
本当にありがとうございます。
世の中には、こういった子の不幸をお金に変えて儲けようとする保護団体もあります。
わんたちを本当の意味で助けるために、何を為すべきなのか。
法律。制度。仕組み。
頭が痛くなるばかりですが、でも今はとりあえず、この子が預かりボランティアさんの元で楽しそうに暮らしていることを嬉しく思います。
続報が届き次第、またご報告させていただきます!

この子の里親様は募集しておりません。

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保護犬シェルター【石松家】の管理人です。
サンホラとプロ野球が好き。

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