不自然の摂理

最初に作ったチラシは、ただの文章でした。
保護活動をしていると、SNSで出会うのも必然的に犬好きの方が多くなりますが、街頭には様々な人がいます。
当然、いろんな人が歩いているわけですから、中には犬のことを全く知らない人や、逆に犬が嫌いという方がわざわざ話しかけてくることもあります。
日本全体で動物愛護精神の涵養を進めてゆくためには、犬好きの人にだけ訴えかけても効果は薄いので、そういった犬に興味がない人に丁寧に説明することも大切になってきます。

とは言っても、パピーミルやオークションの実態は、犬好きの人でさえ知らないことのほうが多いのが現実です。
僕も実際に勤めるまでは知らなかったし……。
ペットショップと違い、パピーミルとオークションは関係者以外にはその実態をほとんど知られていません。
表に出てこない存在なので、なかなか想像力を働かせるのは難しいと思います。
劣悪な繁殖場でも、そこで働いている従業員は優しくまじめな人が多かったり、オークション会場でも、心を痛め罪悪感に苛まれながらリストを作るスタッフがいたり……。
ペットショップ、パピーミル、オークションは、単純な悪で断罪すべき敵だ! 倒せばハッピーエンドなのだ! ――と、そんな簡単にはいかない複雑な事情があるのです。
悪徳ブリーダーを潰そうと躍起になるのは構いませんが、その後のことを考えて行動していますか?
例えばそこで暮らす数百頭の繁殖犬達が、突如住む場所を失ったらどうなりますか? 従業員達が解雇され、お世話をしてくれるスタッフがいなくなったら、誰がその数百頭にごはんを配りに行くのですか?
最悪の場合、引取屋に連れて行かれることになったら……。
保護活動は、慎重にやらねばなりません。
どこか特定の繁殖場を一つ叩き潰せば終わりとか、そういう話ではないのです。
敵は、ヒトの因業が造り出したこの世界の不自然の摂理システムそのものだと、僕は思っています。

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